サバにあたる
サバを食べた後で、じんましんが出たとか激しい腹痛が出て嘔吐したことはないでしょうか。原因として考えられるものに、ヒスタミン中毒とサバに寄生するアニサキスがあります。
ヒスタミン中毒
サバ、マグロ、カツオ、ブリ、サンマなどの青魚にはヒスチジンという物質が多く含まれています。ヒスチジンは、鮮度が低下していく過程でヒスタミンに変化してしまいます。ヒスタミンはアレルギーに関連する物質ですが、煮る、焼くなどの加熱処理をしても取り除くことはできません。ヒスタミンを過剰に摂取してしまうと、顔面の紅潮、頭痛、じんましん、発熱、嘔吐などのアレルギー様症状が出現します。多くは摂食後10〜30分後に出現しますが、少し遅れて症状が出ることもあります。元々、青魚は鮮度が落ちやすい魚です。過度に鮮度の落ちた青魚の摂取は避けた方が良いでしょう。
アニサキス症
アニサキスとはアニサキス亜科に属する線虫の総称です。アニサキスの終宿主はクジラやアザラシなどの海生哺乳類の消化管ですが、長さ2〜3cmのアニサキスの幼虫は魚介類に寄生しています。アニサキスが寄生したままで摂取してしまうと、アニサキスを抗原としたアレルギー反応として、じんましん、腹痛、嘔吐などの症状が出てしまうことがあります。アニサキスの幼虫が寄生する魚介類には、サバ、アジ、イワシ、イカ、サンマなどが知られています。中でもサバは最も多い感染源と考えられています。最近ではサンマを刺身で食べる機会が増えたこともあってサンマが感染源となることが増加しています。
胃アニサキス症、腸アニサキス症
生きたまま摂食したアニサキスの幼虫が胃、稀に腸に穿入することがあります。胃アニサキス症は、魚介類を生食した数時間後に激しい上腹部痛、嘔吐で発症します。経過から胃アニサキス症が疑われた場合には、内視鏡検査を行い虫体が見つかれば鉗子を用いて除去します。胃にアニサキスが穿入しても症状が出ないケースがあります(慢性アニサキス症)。症状が出現する急性アニサキス症は過去にアニサキスの摂食があり、再度取り込んだことによるアレルギー反応が関与していると考えられています。慢性アニサキス症は、初めてアニサキスを摂食した場合でアレルギー反応が出ないためと考えられています。アニサキスの幼虫は2〜3週間以内に死滅して排泄されます。稀ですが、アニサキスが腸管に穿入して腹部症状が出現することがあります(腸アニサキス症)。腸穿孔や腸閉塞を生じた場合には手術が必要になることがあります。
アニサキス対策として有効な方法
新鮮なうちに内臓を除去
アニサキスの幼虫は宿主である魚介類の内蔵に寄生していますが、宿主が死んでしまうと筋肉に移動します。従って、一尾で購入した魚は新鮮なうちに内臓を除去することも予防として大切です。
加熱処理
70℃以上、または60℃1分以上でアニサキスは死滅します
冷却処理
-20℃,24時間以上でアニサキスは感染性を失います。従って、一旦、冷凍して解凍後に生食することで安全性は高くなります。
目視による除去
有効です。
アニサキス対策として推奨されない方法
切断などの機械的方法
十分な咀嚼や薄切りにして食べる方法ではアニサキスを死滅させることは不完全と考えられています。
調味料
通常の料理で使用する濃度の醤油,わさび,酢、塩ではアニサキスは死滅しません。
おまけ
“アニサキスが早期胃がんに噛みついていた”
アニサキスにがんを見分けられる能力があるかどうかは定かでありませんが、線虫の嗅覚を利用したがん研究が行われています。それは、線虫にがん患者の尿に含まれるがん特有の微量な匂い物質を検知させてがんスクリーニングを行うことです(N-NOSE)。実用化までもう少し時間がかかるようです。