インフルエンザの予防と治療

インフルエンザはインフルエンザウィルスの感染によって引き起こされます。比較的急に発病し、多くの患者さんで38℃以上の発熱を認め、関節痛、筋肉痛、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状を伴っています。感染力が強いことから、流行性感冒とも呼ばれ寒い時期に大流行して社会的問題になることはご存知の通りです。実は暑い時期にもインフルエンザは発病するのですが、寒い時期ほど風邪をひきやすい状況になく、また、湿度が高い夏場にはウィルスが飛散しにくいこともあって散発的な発病で終わってしまいます。地域によっては10月にインフルエンザの発病がみられますが、多くは1月から3月にかけて流行してきます。

インフルエンザウィルスにはウィルスを構成するタンパク質の抗原性の違いによってA型、B型、C型に分けられます。C型は小児に多く発病します。C型はウィルスの変異がほとんどないことから、小児期の感染によって出来た抗体で長期間守られるため、その後の再感染は少ないと考えられています。一方、毎年問題となるのはA型とB型で、特にA型はウィルスの変異が頻繁に生じるため二年続けてインフルエンザに罹ってしまう方も出てしまうのです。

インフルエンザに対する治療薬は新たなものも発売されてきていますが、罹ってしまうと高熱を始めとした症状が強く出るため辛いものです。また、基礎疾患を持たれている患者さんや高齢者の方では亡くなられるケースも出てきます。ですから、普段から罹らない努力をしておくことが大切です。

インフルエンザの予防

インフルエンザウィルスの感染経路には飛沫感染と接触感染があります。前者は空気中を飛散しているウィルスを吸い込んでしまうことで感染してしまいます。後者は、手すりや吊革などに付着したウィルスを触れてしまい、ウィルスが付着した手で口や鼻腔を触れることで感染してしまうと考えられています。このことを知った上で対応することで有効な予防が可能になります。

①外出から帰ったらすぐに手洗いをする

帰宅して屋内のいろいろなものに触る前に手洗いをしましょう。食事の前にも手洗いをする習慣をつけましょう。

②マスクをする

ウィルスが気道へ侵入することを防いでくれるため有効な方法です。ただし、材質のしっかりしたものを隙間のないように着けることが大切です。また、一度使ったものはすぐに捨て、使い続けないようにしましょう。

③普段からの健康管理

体力を落とさないためにも、食事、睡眠を十分に取り普段から疲労が蓄積しないようにしましょう。

④流行時期には外出を控える

誰にも会わずに家でじっとしていればインフルエンザに感染する危険は高くありません。ただ、現代人がそんな生活を送ることは無理なことですので、流行時期には不要不急の外出は控えるようにしましょう。

⑤予防接種をする

インフルエンザワクチンを接種することで発病を防ぎ、また、罹っても重症化を防いでくれると考えられています。いつ頃、ワクチンを打てばよいかは難しいところですが、通常、接種して抗体が出現するのに2週間かかります。また、最大効力が期待できるのは1か月後から3–4か月後の間と考えられています。

⑥うがい

うがいのインフルエンザ予防効果は定かでありません。とは言え、外出から帰った時にうがいをする習慣は悪いことではありません。

インフルエンザの症状

インフルエンザウィルスに感染した場合、1~3日間の潜伏期間の後に症状が出ます。急に38℃以上の発熱が出現することが多くみられますが、ワクチンを接種している場合には微熱で止まることもあります。その他、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、頭痛、鼻汁、咳、咽頭痛、食欲不振といった全身症状も現れます。B型ではA型に比べて嘔吐や下痢といった消化器症状が多くみられます。通常は一週間程度で回復していきますが、時に肺炎や脳症を合併して重症化することがあります。

インフルエンザの診断

A型、B型のいずれもインフルエンザ迅速診断キットにより短時間で簡便に診断できます。ただ、発症後12時間以内のような早期では陰性と判定されることがあります。症状からインフルエンザが疑われる時には、発症して48時間以内であれば再検査を受けることができるので相談して下さい。

インフルエンザの治療

安静にし、水分をしっかり補給して脱水状態にならないようにします。

昨今、いろいろな抗インフルエンザウイルス薬が登場してきています。しかし、インフルエンザウイルスの増殖スピードは48時間以内にピークに達するため、どの治療薬も48時間以内に使用しないと十分な効果が得られません。また、インフルエンザの発熱症状には、脳炎や脳症の合併が心配されることからアセトアミノフェン(カロナール®、アンヒバ®、アセリオ®など)の使用が推奨されています。

インフルエンザに罹ったときの安静期間

学童の場合には、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまでが出席停止期間になっています。成人もこれに準じて行動し、周りにうつさないよう努めることが大切です。