我が国の“がん”事情について

我が国の“がん”事情

日本は2人に1人が“がん”を発病する時代で、 もはや“がん”は珍しくない病気の一つです。死亡原因をみても、1位がん、2位心臓病、3位肺炎、4位脳卒中と“がん”で亡くなられる人が最も多くなっており、実に3人に1人が“がん”が原因で亡くなられています。我が国における2016年の部位別がん罹患数をみると、男性では1位胃、2位肺、3位大腸、4位前立腺、女性では1位乳房、2位大腸、3位胃、4位肺となっており、男女問わず胃、大腸が上位に入っています。また、2014年の部位別がん死亡数をみると、男性では1位肺、2位胃、3位大腸、4位肝臓、女性では1位大腸、2位肺、3位胃、4位膵臓の順になっています。1998年以来、死亡原因でもっとも多いのは肺がんです。喫煙と肺がんの関係はよく知られており、最近では女性の喫煙率の増加や受動喫煙も問題になっています。胃がんは日本人に多くみられるがんで、1997年以前は部位別がん死亡数のトップでした。現在でも胃がんの死亡数は多く肺がんに次いで第2位です。大腸がんの死亡数は、現在、第3位ですが、食生活の欧米化に伴って男女とも罹患数、死亡数ともに増加してきています。特筆すべきは、女性で大腸がんが部位別がん死亡数の第1位になっていることです。これは、大腸内視鏡検査を受けることを敬遠して、その結果、進行するまで放置されていることが原因の一つと考えられています。

胃がん

以前より日本人に多いがんの一つです。1998年以来、死亡数は肺がんについで第2位となリましたが、現在でも年間約5万人の方が胃がんで亡くなられています。ピロリ菌感染が主なリスク要因であることは間違いなく、衛生環境の改善により感染率が低下した若い世代には胃がんの発病が少なくなってきています。しかし、中高年以上での発病は今でも少なくないため定期的に胃がん検診を受けることが大切です。ピロリ菌を除菌すると胃がんにならないと誤解されている方がいます。ピロリ菌除菌によって胃がんのリスクが低くなることが期待されていますが、除菌が成功しても胃がんになる方はいます。除菌治療の成功、失敗にかかわらず胃がん検診を継続して受けていただくことが大切です。我が国ではバリウムを用いた胃透視での胃がん検診が行われており、胃がん死亡数の減少に貢献してきました。しかし、早期の胃がんを見つけるためには内視鏡検査での胃がん検診が優っています。平成29年度から一般住民検診でも内視鏡を用いた胃がん検診が行われるようになりました。早期胃がんに対する内視鏡治療の技術的進歩は目覚ましいものがあります。早期に発見できるように、今後は内視鏡を用いた胃がん検診に努めて下さい。

胃がんのリスク要因

  • ヘリコバクターピロリ菌感染
  • 多量の塩分
  • 喫煙
  • 多量の飲酒
  • こげた食べ物
  • 身内に胃がんを患った方がいる
  • 胃潰瘍の既往

胃がんを早期に見つけるためには

一年に一回、内視鏡検査による胃がん検診を受ける

大腸がん

大腸がんによる死亡数は肺がん、胃がんについで第3位のがんです。食生活の欧米化(高脂肪・低繊維食)に伴って患者数は増加してきています。飲酒との関連も指摘されています。その他、生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として運動不足や肥満があります。また、長期に慢性腸炎を患うと大腸がんリスクが高くなることがわかっています。一般の住民検診(対策型検診)では便潜血検査2日法による大腸がん検診が行われており、大腸がんによる死亡数の減少に貢献しています。しかし、便潜血検査法による大腸がん検診の問題点として、陽性となったときに内視鏡検査による精密検査を受けられないことが挙げられています(精検受診率が60%前後と低い)。また、便潜血検査法では早期大腸がんやポリープでの陽性率が高くないため、早期発見を目指すためには内視鏡検査が必要になってきます。

大腸がんの発生には2つの経路があると考えられています。1つは良性のポリープ(腺腫)から癌化するもので腺腫―癌連関(adenoma-carcinoma sequence)と呼ばれます。もう1つは初めからがんとして発生するものでデノボ癌(de novo癌)と呼ばれます。良性の腺腫が癌化していく目安の一つに大きさが挙げられます。大腸がんの予防のために5〜6mm以上の腺腫は内視鏡で切除することが推奨されています。

こんな時には大腸内視鏡検査を受けましょう

  • 検診で便潜血陽性だった
  • 以前に比べて便が細くなった
  • 血便が出る
  • 便秘と下痢を繰り返す
  • 大腸ポリープを切除したことがある
  • 切除していない大腸ポリープがある
  • 身内に大腸がんを患った方がいる
  • 大腸がんが心配だ

大腸がんにならないために

  • 高脂肪食(動物性脂肪)の取りすぎに注意
  • 食物繊維をしっかり摂取
  • 飲酒量を少なくする
  • 肥満の改善
  • 快便を心がける
  • こつこつ毎日運動を
  • 40歳過ぎたら一度は大腸内視鏡検査

食道がん

胃がん、大腸がんに比べると患者数は少ないがんですが、進行すると予後が不良のことが多いため早期での発見が望まれます。しかし、早期に症状が出ることは少なく、進行するにつれてしみる感じ、胸痛、つかえ感が出現してきます。男性に多いがんで、喫煙歴、飲酒歴のある中高年以上の方は注意して下さい。習慣性に熱いものを摂取している方も注意が必要です。最近では女性の喫煙、飲酒が増加しているため、女性でも食道がん発がんリスクが高くなっていると考えられます。バリウムを用いた通常の食道透視では早期がんを発見することはできません。専門医による内視鏡検査を受けて下さい。

逆流性食道炎と食道がんの関連性がわかってきました。ただし、逆流性食道炎からすぐに食道がんができるのではなく、治療が不十分な状況で10年近い期間が必要と考えられています。

食道がんのリスク要因

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 男性
  • 中高年以上
  • 刺激物
  • 熱い食べ物・飲み物
  • 多量の塩分
  • 逆流性食道炎