ヘリコバクター・ピロリ菌除菌治療を受けられる方へ

ピロリ菌は、胃潰瘍、胃がんなどの様々な胃の病気と関連することがわかっています。ピロリ菌を除菌することは、これらの病気の予防につながります。しかし、ピロリ菌除菌後でも胃潰瘍や胃がんを患うことがあることは忘れないで下さい。

ピロリ菌治療の流れ

□ 胃カメラ

□ ピロリ菌感染検査

□ ピロリ菌除菌治療

□ 除菌判定検査

□ 年一回の胃カメラによる胃がん検診

①胃カメラの実施

ピロリ菌検査、治療を受けるためには胃カメラを済ませておく必要があります(3ヶ月以内に受けられていれば構いません)。これは、胃がんが潜んでいるのを気付かないまま治療を開始してしまうと、発見が遅れて進行させてしまう危険があるためです。

②ピロリ菌感染の確認

血液検査、呼気テスト、便中抗原検査などで行います。

  • 呼気テスト:正確性の高い方法ですが結果が出るのに3〜4日かかります。
  • 血液検査:数日で結果がわかります。過去の感染(自然除菌された状態)との区別がつきにくいことがあります。
  • 便中抗原検査:30分程度で結果が出ますが古くない便が必要です。採便キットをお渡しして持参してもらいます。

呼気テスト、便中抗原検査は、ある種の胃薬の影響を受け偽陰性になってしまうことがあります。内服中の薬があれば事前に申し出てください。

③ピロリ菌治療

まず、一次除菌治療を行います。除菌成功率は約90%です。失敗された10%の患者さんは二次除菌治療を受けてもらいます。二次除菌治療の除菌成功率も約90%で、一次除菌治療、二次除菌治療でも失敗する危険性は約1%です。二次除菌治療を失敗した場合の三次除菌治療については、現在のところ保険診療で認められていません。

  • 一次除菌治療

タケキャブ 胃薬

サワシリン ペニシリン系抗生剤

クラリス  マクロライド系抗生剤

ミヤBM   整腸剤

過去にペニシリン系抗生剤、マクロライド系抗生剤のアレルギーがある方は服用できません

  • 二次除菌治療

タケキャブ 胃薬

サワシリン ペニシリン系抗生剤

フラジール 抗菌剤(メトロニダゾール)

ミヤBM   整腸剤

フラジールはアルコールの代謝を遅らせるため、飲酒されると翌朝アルコールが残った状態になり危険です。治療中は禁酒を守って下さい。

治療中の飲酒と喫煙は成功率を下げてしまうというデータがあります。せっかくの治療ですので治療中は禁酒、禁煙でお願いします。

主な副作用

  • アレルギー:薬に対するアレルギー反応として薬疹(全身に多数出現する小さな紅斑)が出現してきます。掻痒感を伴わないこともあります。アナフィラキシー状態になると粘膜の充血や呼吸困難、浮腫が生じて危険な状態になります。
  • 薬剤性下痢:抗生剤起因性の水溶性下痢が頻回に生じます。血便になることもあります。
  • 発熱
  • 腹痛

重篤な副作用が出現すると危険な状態になることがあるため、内服を中止し、ただちに医療機関を受診して下さい。

その他の症状:軟便、味覚異常など。通常、これらの副作用は治療を継続して構いません。

④除菌判定検査

呼気テストまたは便中抗原検査で行います。治療終了後、暦のうえで一ヶ月は開けて下さい。これより早く検査をすると偽陰性(ピロリ菌が弱っているだけで残っている状態)のことがあります。

血液検査で判定する場合もありますが、治療前に血液検査を行っていること、治療後、半年以上間を開けてからの検査になります。

⑤年一回の胃カメラによる胃がん検診

除菌治療はあくまで予防にすぎません。胃がんを早期に見つけることができれば、多くは外科的な切除をしなくても内視鏡的に治療ができます。ただ、胃がんの中には進行が早いものも含まれるため2年以上開けた検査はお勧めすることができません。また、バリウムを使った胃透視では早期の胃がんの発見は難しいものです。1年に1回の胃カメラでの検診を受けるようにして下さい。