IBD治療について①

メサラジン/サラゾスルファピリジン

 

メサラジン

ペンタサ®    経口剤、注腸剤、坐剤

アサコール®   経口剤

リアルダ®    経口剤

サラゾスルファピリジン

サラゾピリン®  経口剤、坐剤

メサラジンは5-アミノサリチル酸(5ASA)とも呼ばれ、潰瘍性大腸炎、クローン病治療の基本薬です。特に、潰瘍性大腸炎では寛解導入、寛解維持に有効であり治療の中心に位置付けられます。メサラジンは体内に吸収されて効果が出る薬剤ではなく、塗り薬のように腸管粘膜に直接作用して炎症を抑えます。メサラジンをそのまま服用すると胃、上部小腸で多くが吸収されてしまうため、経口剤では病変のある下部小腸や大腸にまで薬剤を到達させるためのさまざまな工夫がされています。ペンタサは小腸の真ん中あたりから(時間依存型放出調節製剤)、アサコールとリアルダはほとんどが大腸で薬剤が溶出するようになっています(pH依存型放出調節製剤)。従って、小腸に病変のあるクローン病ではペンタサが用いられます。一方、アサコールとリアルダは現在のところ潰瘍性大腸炎だけが保険適用となっています。サラゾピリンは古くからある薬で、メサラジンに余分なスルファピリジン(サルファ剤)が結合した構造になっています。大腸の腸内細菌の働きによってこの結合が分解されメサラジンが遊離し効果を発揮しますが、スルファピリジンによる胃腸障害や頭痛などの副作用が出現することがあるため処方される頻度は減っています。サラゾピリンの一部はスルファピリジンとメサラジンが結合した状態のままで上部小腸から吸収されます。これには全身の免疫を調節する作用があることから、潰瘍性大腸炎の難治例に対して少量のサラゾピリンを他のメサラジン製剤と一緒に処方することがあります。メサラジンには容量依存性の抗炎症作用があることから、潰瘍性大腸炎の寛解導入時には十分量のメサラジンを十分な期間使用することが大切になります。坐剤、注腸剤は潰瘍性大腸炎に適用があり、直腸やS状結腸に炎症が強い症例で用いられます。

副作用

メサラジンの副作用はほとんどなく、妊娠中や授乳中でも服用していただけます。ごく稀に、骨髄抑制、肝障害、心筋炎、間質性肺炎、胸膜炎、間質性腎炎などを生じることがあります。また、メサラジンに対するアレルギーがあると発熱、下痢、腹痛などの症状が出現し、もともとの病態の悪化と鑑別が難しくなることがあります。

サラゾピリンの服用中に精子数と精子遊走能の可逆的な減少が生じて男性不妊の原因になることがあります。ただし、催奇形性の心配はないため、挙児を希望される時に前もって中止する必要はありません。