IBD治療について②

ステロイド

プレドニゾロン     経口剤、注射剤

ゼンタコート®     経口剤

メチルプレドニゾロン  注射剤

ステロネマ®      注腸剤

プレドネネマ®     注腸剤

レクタブル®      注腸剤

リンデロン坐薬®    坐剤

ステロイドは抗炎症作用の強い薬剤で、比較的速やかに病態を改善してくれます。一方で、いろいろな副作用が出ることがあるため注意も必要です。坐剤、注腸剤は潰瘍性大腸炎に保険適用があり、病型、病状に応じて、経口剤、注射剤、坐剤、注腸剤を使い分けます。ゼンタコートRはクローン病に保険適用があります。

潰瘍性大腸炎治療

左側大腸炎型、全大腸炎型の軽症例、中等症例では、病状に応じてメサラジン製剤にステロイド注腸剤の併用を行います。これらの治療効果が不十分なときや炎症の強い中等症例では、プレドニゾロン経口剤の併用を行います。重症例ではプレドニゾロンの強力静注療法やメチルプレドニゾロンを用いたパルス療法を行います。ステロイド投与によって病状が回復すれば、状態をみながら減量、離脱するようにしていきます。ステロイドの減量を行なっている途中や投与を終了して直ぐに再燃することがあります(ステロイド依存例)。この場合には、免疫調節剤の併用など他の治療法の併用を考慮するべきで、寛解維持のために安易なステロイド治療の継続をするべきではありません。十分量のステロイドが1〜2週間投与されても改善効果が出ていない場合には、ステロイド抵抗例として他の治療法に切り替える必要があります。

直腸炎型では病状に応じてステロイドの坐剤、注腸剤を併用します。ステロイドの全身投与は避けるようにします。

クローン病治療

病型、病状に応じてステロイドの経口剤、注射剤を使い分けます。軽症ではゼンタコートR、中等症~重症ではプレドニゾロンの内服、重症ではプレドニゾロンの注射が選択されます。ゼンタコートRはブデソニド製剤のため肝臓で速やかに代謝され全身への影響が少ない経口剤です。薬剤が放出さる小腸と大腸近位部での効果が期待できますが、大腸遠位部への効果は期待できません。ステロイドの漫然とした投与は避けるべきで、減量、離脱が困難なときには免疫調節剤の併用など他の治療法を考慮します。

副作用

ステロイドの副作用には、高血糖・糖尿病、胃・十二指腸潰瘍、骨粗鬆症、筋萎縮、成長障害、白内障・緑内障、高血圧、浮腫、無菌整骨壊死、動脈硬化、高脂血症、血栓症、易感染性、精神障害、不眠、皮膚線条、紫斑、満月様顔貌、ステロイド痤瘡、肥満傾向、多毛、月経異常などがあります。これらの中には、高血糖や骨粗鬆症のように少量の投与でも生じてしまうものもあります。また、投与を中止しても治らない不可逆的なものもあるため、早期に発見することが大切です。

続発性副腎皮質機能不全

私たちの体の中には、プレドニゾロン換算にして2.5〜5mgのステロイドホルモンが副腎皮質から分泌されています。これ以上の量のステロイドを体外から取り入れると副腎皮質からのステロイドホルモン分泌が抑えられます。ステロイドの長期服用により副腎皮質の抑制が長期間になると、副腎皮質の機能回復に時間がかかる場合が出てきます。副腎皮質の機能が回復していない状態でステロイドを急に中止したり、急いで減量、離脱しようとすると、脱力感、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、頭痛など、様々な症状が出現することがあります。この場合には、代謝の早いステロイド製剤コートリルRを用い、副腎皮質機能の回復をチェックしながら数ヶ月以上かけて徐々に減量、離脱していくようにします。