ピロリ菌は胃のいろいろな病気に関わっています。特に胃がんとの関連が知られるようになってから、テレビや新聞、雑誌などで取り上げられる機会が多くなりました。病院やクリニックでの保険診療ではピロリ菌検査は必ず内視鏡検査のあとに行いますが、人間ドックや健康診断では内視鏡検査を受けなくてもピロリ菌検査だけを受けることができる場合があります。
感染診断検査で注意すべきこと
胃粘膜組織、血液、尿、便での検査や呼気試験が行われています。それぞれ一長一短はありますが、どの検査も信頼度の高い検査です。しかし、どの検査も感度が100%と言えないため、実際はピロリ菌に感染しているのに陰性の結果となるケースが出てきます(偽陰性)。
偽陰性が疑われたら
病院やクリニックでは、内視鏡検査でピロリ菌感染が疑われた場合に感染診断検査を行っています。従って、偽陰性の可能性が高いと考えられるケースでは他の検査を行ない確認するようにしています。検査の種類によってはある種の胃薬や食事の影響を受けて偽陰性になっていることもあるため、内服されている薬や食事の後の検査かどうかを申告して頂くことが大切です。
血清抗体検査での“陰性高値”
血清抗体検査は服用中の薬剤や食事の影響を受けにくく、他の血液検査で用いた検体で測定できる簡便さもあって、初期の感染診断検査として人間ドック、健康診断でよく行われています。現在、国内で多く用いられている血清抗体検査キットでは10 U/ml以上を陽性としています。10 U/ml未満は陰性の判定になりますが、3〜10 U/ml未満となった方の10〜40%にピロリ菌が棲息する感染者が存在していることがわかったのです。そこで、血清抗体検査の結果が3 U/ml未満であれば確実に陰性と判定し、3〜10 U/ml未満の場合には他の方法で再検査を受けることが推奨されるようになりました。逆に、人間ドック、健康診断によっては血清抗体検査が3 U/ml以上を陽性として説明されている場合もあります。この場合も、いきなり除菌治療を受けるのではなく、他の検査で現在の感染を確認してから治療を受けるのが良いでしょう。
血清抗体検査では
- 3 U/ml未満 陰性(未感染)
- 3〜10 U/ml未満 陰性高値で要注意!!既感染、現感染の可能性あり 他の方法で再検査を
- 10 U/ml以上 陽性(現感染)
未感染と既感染は大きく違います
内視鏡検査で萎縮性胃炎があるにも関わらず、ピロリ菌除菌治療を受けたことがないのにピロリ菌検査で陰性となるケースがあります。過去に気管支炎などの治療で服用した抗生剤で、たまたまピロリ菌が除菌されたものと推測されています。ピロリ菌除菌治療は胃がんリスクを下げると考えられますが、胃がんにならないことを確約するわけではありません。内視鏡検査で萎縮性胃炎と診断された場合には、定期的に内視鏡検査を受けるようにして下さい。
胃粘膜高度萎縮でも“陰性”に
ピロリ菌感染によって胃粘膜萎縮が高度になると、ピロリ菌が棲息できなくなりピロリ菌検査で陰性となってしまいます。ピロリ菌除菌治療を受けなくて済むのだからラッキーと思わないで下さい。実はこの状態の方の胃がんリスクが最も高いと考えられているのです。未感染者との鑑別は内視鏡検査で容易にできますが、内視鏡検査を受けずにピロリ菌検査だけを受けた場合には区別ができないため怖い落とし穴になります。